ヒトラーの人生と第2次世界大戦をたどるダークツーリズムのガイドブック

20世紀最悪の独裁者といわれているアドルフ・ヒトラー。彼の誕生から最期までの、ゆかりの地、そして第二次世界大戦の足跡をたどっているのが本書です。ヒトラーの残忍さが記された書籍かと思いきや、淡々と歴史的事実を語りながら、その地を案内していきます。

“ブラウナウは観光客も少なく、ヒトラーの生家の前で足を止めて見ている人はほとんどいなかった。
「自由と平和、民主主義のため、ファシズムを繰り返してはならない。何百万人もの犠牲者が教えている」
と、生家の前にある石碑に刻まれているが、ヒトラーのヒの字もない。観光案内所に置いてあるガイドにも「Memorial Stone」(記念碑)と表記してあるだけで、「Hitler」という表現は、本文中に1回登場するだけだ。ブラウナウ市側としても、ネオナチス(以下ネオナチ)の聖地となるのを恐れて、ヒトラーの生家の取り扱いに苦慮し、直接的な表現は避けている。家の前が駐車場なのも、ネオナチが集まるのを防ぐ目的があるようだ。”

写真入りで掲載されているヒトラーの生家は、現在、空き家。ヒトラーの父は税関職員で、生家の場所も街の中心部の旧市街からほど近いので、それなりに良い暮らしをしていたのではないかと著者は推測しています。4月20日のヒトラーの誕生日になると、今でも、大勢の警官が集まり、物々しい雰囲気になるとのこと。死後70年以上を経た今もなお、ヒトラーは存在感を保っていることが窺えます。

父親の仕事の関係で、引っ越しが多かったヒトラーは、ブラウナウを離れた後は、パッサウなどいくつかの土地を転々とし、12~18歳はリンツで過ごします。リンツには、ヒトラーが通った中学校(後に退学)や郊外のレオンディングには両親のお墓がある教会があり、両親を亡くしたのも、親友となるアウグスト・グビツェクと出会ったのもこの地。総統時代には、オペラハウスや美術館などを作るなど、リンツを大改造する計画があったそうなので、ヒトラーにとって、リンツは思い入れがあった地だったのかもしれません。

両親のお墓がある教会近くで、著者が老人にヒトラーが住んでいた家の写真を見せて場所を聞いたところ、急に拒絶して去ってしまったという。「写真がヒトラーの家だったからかどうかは、定かではない」とはいうものの、ヒトラーが関係する場所には少し注意が必要なようです。

本書は、あくまでも歴史散策として旅行を楽しむガイドブック。バスの乗り方や目的地の探し方などが細かく記されています。一般的な観光ガイドブックとは異なり、その街で著者が感じたことなどもつづられているので、現地ならではの雰囲気を感じることができるのではないでしょうか。ダークツーリズムの旅行記として読んでも楽しめます。紹介されている場所は観光地ではないことも多いので、実際に訪れるのはある程度、旅慣れていることが必要かもしれません。歴史に興味がある方、学べる旅をしたい方におすすめです。

『ヒトラー 野望の地図帳』
サカイヒロマル(著)/電波社