九十歳。だからこそ、自然に自分らしい生き方

“じきに九十歳を生きる毎日は、ただ新しい日々の訪れと過ぎ去るときどきに、目に映る事柄や近しい人々とのたわいもないやりとりをただ楽しみに、明るくていねいに、毎日を暮らすことこそが私の人世だと思って過ごしております。”

そんな著者が、感じたことを書き記した雑記帳。長い年月を経て、人生を達観しているからこそ、自由に穏やかに生きる著者に、凛とした美しさを感じる本です。

“高齢者が美しくいることに反発する人はいないと思います。暗い顔をして灰色の風景に収まるよりも、せっかく生きているこの時代に、せめて生き生きした想いをもちたいものと最近とみに思います。心が解放されますよ。”

著者は、真っ赤なセーターを長いこと愛用しているそうです。若い頃にご主人に言われた「君は原色が似合うから」という言葉や、まだ40~50年前に買った服が傷むことなく着ることができることもあって、今も大切に着ているとのこと。それに「年だから」と地味な色を着るよりも、良い美しい色を身にまとい、皺も体型もカバーしたほうがいいのではないかと話しています。

“毎日就寝前に必ず、下着を取り換えます。使用した物は洗濯をして干しておきます。
もし夜中に病が発生したり、自分ではどうしようもない状態に陥ったりして他人の手を煩わせざるをえなくなった時、見苦しくないように。いつどこでどうなるか高齢者の身はわかりませんから。
覚悟を常にもって神経を使い、身綺麗にしていたいと思っています。”

明るく暮らす一方で、いつ何があっても大丈夫なように覚悟をもって生活をしています。恥は自分だけでなく、周りの人にも悔いを残すことを懸念しているのです。どんな時でも、後悔することなく美しくいたい、そんな女性のしなやかな強さを感じます。

あくまでも、明るくポジティブで自由。それでいて、穏やかな覚悟を持って生きる著者の言葉は、雅やかで美しい。誰と比べることもなく、気兼ねすることもなく、自分らしくありたいと思える本です。どうせなら、素敵に年を重ねたいものですね。(中山寒稀)

『老いをきりりと、生きる』
島津みえ(著)/水曜社